出張レポート


目的

次の2項目を目的として、ドイツに出張した。

  1. VISUALSHOCKCeBIT '97出展
    世界最大の事務・情報・通信分野の見本市である
    CeBIT '97VISUALSHOCKを出展し、当社の先端技術をアピールするとともに、欧州市場での評価・反応を探ることを目的とする。会期は7日間。
  2. ドイツ国立情報処理研究所(GMD)との情報交換
    ハイパーメディアや分散環境における協調作業などの研究を行っている
    Haake教授らのチームを訪問し、それぞれの研究内容を紹介し情報交換する。

成果

  1. VISUALSHOCKCeBIT '97出展
    会期中、特に大きなトラブルや事故もなく無事終了した。デバイス関連を中心としたブースに出展したこともあって(内容の章に後述)、来場者の目的意識と若干そぐわない感もあり、名刺交換までした人は約
    50名にとどまった。それでも、配布したパンフレットは1000部以上、配布した説明用CD-ROM400枚にのぼり、多くの人にアピールできたと思う。ドイツだけにとどまらず世界中の数多くの国々の人と話をして意見等をもらい、個人的にも非常に良い経験ができた。
  2. ドイツ国立情報処理研究所(GMD)との情報交換
    GMDDOLPHINを中心としたハイパーメディアの研究内容と我々のVISUALSHOCKをお互いにデモし、ディスカッションを行った。GMDの研究内容は、独自のインタフェースに閉じたハイパーメディアである点が古い(実用的でない)と感じられたが、ペンによるゼスチャーを使ってビジュアルにハイパーリンクを定義したり実行できる点などは直感的でわかりやすく非常に参考になった。GMDでは、ハイパーリンクを使ったネットワーク上での情報共有を考えており、VISUALSHOCKによる市販アプリ連携や動画ハイパーリンクなどに大きな興味を示された。現在開発中のVISUALSHOCK英語版が完成し次第GMDに送付し、今後も情報交換していくことにした。

内容

  1. CeBIT全体の様子
    CeBIT'97は世界最大の事務・情報・通信分野の見本市であり、出展社は65カ国6800(COMDEXは約2000)、入場者は60万人以上(COMDEXは約20万人)にのぼる。下名はCOMDEXには行っていないので比較できないが、日本のビジネスショーなどと比べると面積的にも内容的にも5倍以上の規模のように感じられた(1週間かけても全部回るのは無理?)。来場者もドイツ国内や欧州各国にどどまらず、アジア(台湾の人が多かった)、中東、アメリカ、アフリカなど非常に国際的だった。
    会場は比較的静かで各ブースとも半分近い面積を商談コーナーにとっており(ビールやワインなどの飲み物と食事つき)、日本のビジネスショーなどのように「技術やコンセプトを派手にデモする場」ではなく、「地味な商談の場」なのだと感じられた。
    Microsoftのブース

    写真では見えにくいが、2階部分が接客コーナー
    になっており、酒や軽食をふるまっている。

    会場は展示会場図のように区分けされており、テレコミュニケーションの占める割合が比較的大きい(通信分野は欧州が進んでいる)。コンピュータ関連の展示に関しては、VISUALSHOCKデモ説明の合間を縫って主なブースをざっと回ったが、日本で判っている以上の新しい内容は特に見られなかった。同時期に米国でInternet World'97が開催されてMicrosoftNetscapeIBMなどから新しい技術が発表されたが、CeBITの方では特にこのようなこともなく、例えばMicrosoftのブースではIE4.0ではなくIE3.0(もちろんドイツ語版)をデモしていた(Microsoftのブースでは唯一SAP社との連携が日本では見られない内容だった)。やはり、技術アピールの場というより既にある商品の商談の場なのだろう。
    コンピュータ関連の展示・デモ環境はほとんどが
    Windows95/NTであり、Macintoshはほとんど見られなかった。これは目に見えるクライアント側の部分であり、サーバ側にはunixが使われているケースも多かったと思われる。
    日本のメーカー各社も出展していたが、液晶、
    MPEGチップといったキーデバイスを武器にした商品で売り込みをかけていたシャープと日立が元気なように感じられた(これは個人的な感想)。

  2. 三菱電機ブース
    三菱電機はディスプレイ、プリンタ、フロッピー、DVD、スマートカードなどのデバイス関連を中心とするメインブース(ホール8)apricot PC関連(ホール12)及び携帯電話関連(ホール26)の3ヶ所のブースに分かれて展示を行った(建物も別でそれぞれ徒歩10分以上の距離)。この中で、VISUALSHOCKはデバイス中心のメインブースのNew Technologyコーナーに展示してデモを行った。New Technologyコーナーには、VISUALSHOCKMonAMI(Java端末=NC)、ジェスチャー入力型インタラクティブゲーム(先端総研)の計3件が出展された。
    三菱電機ブースだけでなくホール
    8全体がデバイス関連の展示が中心の建物だったこともあり、来場者もデバイスに関心のある人が多く、様々な国から新しいデバイスの買い付けに来たという話を良く聞いた(VISUALSHOCKの展示がDVDの向かいで、DVDの説明員が不在がちだったことから、DVDの商売の話を聞かれることも多かった)
    メインブースにおける三菱電機の展示自体は、統一コンセプトにやや欠け、それぞれのデバイスがバラバラに展示されている感があった(シャープなどキーデバイスを前面に打ち出している会社に対して)。また、
    (日本ではお馴染みの)朝礼や夕礼による方針説明や責任者の紹介がなかったり、さまざまなことについて指揮系統がはっきりしなかったり時間がいい加減だったりして、「ドイツ人は日本人と同じようにきちんとした国民性」と考えていた自分にとっては意外だった。
     
  3. VISUALSHOCK展示の反応
    デバイス中心のブースだったこともあって来場者の中でソフトウェアやシステムを見に来たという人は比較的少なかった。それでもマルチメディアで見栄えのするデモだったこともあって、非常に多くの人からリクエストされてデモを見せた(配布したパンフレット1000部以上、CD-ROM400)。もともとソフトウェアを見に来たのではない一般の人も、クリックで次々と情報が現れるデモを見て、ほとんどの人が「おもしろい、便利そうだ」という感想を持ってくれた。名刺交換までした人は約50名だったが、おおむね好評で多くの人から「いつからいくらで売るのか」といった具体的な話を聞かれた。ただし、レバノン、スロベニア、エジプト、スリランカなど人が自国で使いたいというような話もあり、基本的には「これは技術展示であり(日米以外での)製品化は未定」との見解で通した。最初に述べたようにCeBITは技術アピールの場ではなく商談の場ということからすれば、若干場にそぐわない感はあった。
    なお、目の前が
    DVDの展示で多くの人を集めていたことから、「DVDのデータから動画ハイパーができたらおもしろい(技術的には動画ハイパーのMPEGサポート)」という声が多く寄せられた。
     
  4. ドイツ国立情報処理研究所(GMD)との情報交換
    Department ManagerであるDr. Jorg HaakeProf.Dr. E Neuhldら計4名の研究者と会って、お互いのデモを見せてディスカッションした。当方からはノートPCを持ち込んでVISUALSHOCKのデモを行ったが、ビジュアルなハイパーリンク関係の表示、市販アプリケーション連携、動画ハイパーなどにかなりの興味を示され、技術デモだけでなくエレベータ保守会社や外食産業のシステム例まで見せた。
    先方の研究内容としては、DOLPHINSEPIAを見せてもらった。研究の方向性はハイパーメディア技術を使って分散環境における協調作業を実現するということであり、GMD全体としてはネットワークの基盤技術等のテーマにも数多く取り組んでいるようだった。ただ、ハイパーメディアの部分は独自の構造定義とインタフェースに閉じており、今の時代としては少し古いように感じた。しかし、ペンによる手書き文字やゼスチャーによってハイパーリンクを定義したり実行できる点は直感的でわかりやすく非常に参考になった(手書きで文字を書いて四角で囲むとノードになる。ノードを結ぶとハイパーリンクになる・・・これはVISUALSHOCKと同じ。ノードの中に線を入れるとノードが開く等)。これらの成果はドイツ政府の中で試行されているとのことだった。
    GMDとは今後とも情報交換していくこととし、GMDからは最新の論文(ドイツ語を英訳したもの)を送ってもらい、こちらからは現在開発中のVISUALSHOCK英語版が完成し次第GMDに送付して評価してもらうことにした。